Mamiko Kikuchi

年の差の恋を描いたものがたり

恋の持続力は男の人の方が少し長いのかもしれない。
ほとんどが、おじいさんになっても若い女の子とデートしたいとかイチャイチャしたいとか考えてる。
その点女はいくつも段階があって、都度好きになる対象が変わっていくことが多い。
女の中にはいくつもの顔があるのかも。
今回のテーマはうんと年上の男の人と、若い女の情事のあれこれを描いたものがたり。
この手の作品は結構多い。
男の人が若い女の子が好きなのは、自信を持ちたい故の支配欲とか、もしくは単純に若い裸が見たい性だったりするもしれないけれど、
若い女が年上の男の人に体を許すきっかけの多くはきっと好奇心と刺激のため。
知らない世界をいつも見てみたいっていうアンニュイな気持ちから始まるだけ。
そのぎこちない互いの愛がこの世界に永遠に閉じ込められるのか、それとも残酷に壊れてしまうのかはきっと愛し方次第。

Mamiko Kikuchi

哀しみのトリスターナ

公開年:1970年
製作国:フランス/イタリア/スペイン
監督:ルイス ブニュエル

好きとか嫌いとか、愛してるとか憎んでるとか、そんな気持ちの事がよく分からない時に男の人を知ってしまう。
成熟した少女が多いフランスの映画では、そんな若い少女とおじさんの奇妙なラブストーリーが多い気がする。
これも、お下げ髪の清純なトリスターナが、聾唖の青年にスカートをめくられて恥じらうシーンから、ベランダのポーチでガウンの中を見せるまでの時間を描いた物語。
そしてこれは年の差とおじさんの下心が招いた悲劇の物語。
女は何も知らない無垢な状態で手篭めにしたい。優しく保護して、抱きしめれば一生自分のものになるって信じてるのならホントに愚か。
ルイス ブニュエル監督らしい変態性も相まって、若い女に溺れた老人の悲劇をなかなか強烈に見せつけてくれる。

Mamiko Kikuchi

17歳の肖像

公開年:2009年
製作国:イギリス
監督:ロネ シェルフィグ

これは、これから女性になる全ての少女への教科書。
17歳の年齢はとても危うい年頃だ。
アクリルのように透明感のある少女らしさは反発と葛藤があるから輝く。
そんな時に密やかに嘘をひそんでいそうな世界にが目の前に現れたら、今まで見せられていた退屈な人生は偽りだったんじゃないかと思ってしまう。
遅くまでダンスを楽しんでお酒を楽しませてくれる遊び人の大人の男性がステキに見えちゃったりして、自分が特別な存在になれた気にさえなって。
まだ幼いジュリーがこの不安と好奇心の狭間で飛び込んだ大人の恋はとても痛々しい結末を迎えるのだけど、女が自分の意思をもって賢くなってしまう一歩手前の頃、こんなビターな恋愛が女の子には必要だったりするのだ。

Mamiko Kikuchi

娚の一生

公開年:2015年
製作国:日本
監督:廣木隆一

大っ嫌いとか、イライラするとかそういう気持ちはじっくり見つめたほうがいい。
その気持ちには0.数パーセントの気になるが隠れていて、それはいつしか「好き」にかわるかもしれないから。
「嫌い嫌いも好きのうち。」
昔の人は上手いことを言ったものだ。
説明できないモヤモヤしたもどかしい感情は、知らないうちに絆のようになってしまうこともあるからね。
図々しくてムカつくのに一緒にいるとなんだか安心しちゃって、居ないとなんか物足りなくなる。そんな居候の52歳 独身男をトヨエツが抜群の存在感で演じて、しかも小出しに大人のセクシーを押し出してくるから、最後はこのつぐみと同じ気持ちでこの男が気になって仕方なくなる。
あんなエロく愛撫できるのは、渋いおじさんだからなんだろうな。

Mamiko Kikuchi

エレジー

公開年:2008年
製作国:アメリカ
監督:イザベル コイシェ

どの道、人は傷つかずにはいられないのだから、今目の前の芸術に心震わせて残りの人生を生きればいい。
老年の教授の心を動かしたヒロインの女学生を演じるペネロぺ クルスは惜しげもなくヌードを披露したが、乳房も、うつぶせに寝る彼女の腰からお尻にかかるラインもまさしく芸術品のようでうっとりとしてしまう。
病気によって欠けた身体で目の前に現れたコンスエラのに涙を流すディビットに、「まるであなたより私がずっと年上のようだわ。」とやさしくなだめる彼女の凛とした姿は完璧なカラダだった頃よりずっと美しい。
男は死を目前とすると不安にさいなまれ、おびえ始めるけど、女は死を目前とすると生命力を増すのだろうか。
人間のエロスを描きながらもなぜだかとても上質な気分にさせられる作品。

Mamiko Kikuchi

公開年:2005年
製作国:韓国
監督:キム ギドク

何というエロチックな寓話なのだろうか。
揺れる海原に築かれた老人と少女2人だけの特別な世界を観ていると、だんだんも地上の常識や法律は無意味なものに思えてくる。
ピンと張った糸で弾く音色は人々の心をうっとりと癒すのにそれが一本でも緩まったとたんにその音程を狂わしてしまう。
朽ちていく老いた命と、日に日に輝く若き命の歪みを埋める事ができるのは天の神のみで、老人は一縷の望みを胸に天に弓矢を放ち、天の許しを請う。
初めは生理的に無理だと感じたストーリーなのに、船上で気高くも交わす2人の婚礼の儀式に諦めとも圧倒とも近い複雑な気持ちで私は画面を見つめていた。
少女役のハン ヨルムの原始的な色気がこの作品をより神秘的に彩って、極上の年の差ラブストーリーに仕上がってなんとも言えない余韻を残す。