Mamiko Kikuchi

少女のロストバージンのものがたり

ロストバージン、それは意外と人によって重きが違う。
神聖に、大切に守りそれを厳かな儀式のように考える人や、逆にそれは大人の女性への通過儀礼だと割り切る人もいる。
その先にエクスタシーも知らないのに、自分の中に誰かが入ってくるのを受け入れて血を流すなんてよく考えてみたら、ものすごい勇気ある行為!だから女の子側からみた世界は色々複雑だ。
ロマンチックだったり、痛々しかったり、切なかったり、さまざまな少女たちのさまざまなはじめてのものがたりをのぞいてみて。

Mamiko Kikuchi

魅せられて

公開年:1996年
製作国:アメリカ
ベルナルド ベルトリッチ監督

この作品の監督ベルナルド ベルトリッチは今年この世を去った。
彼はその鮮やかな映像美だけでなく、女優をとびきり美しく映すことでも有名な監督だった。この映画でヒロインを演じた当時19歳のリブ タイラーも、その長くしなやかに伸びる手足が印象的で、少女と女性の中間の時期だけの、とびきりキラキラした瞬間が切り取られていた。
母の過去を探る旅がいつのまにか自らの性の目覚めに繋がり、深い愛もまだ知らないのに早く母に近づきたいと願うから、会って間もない男と恋をして抱かれる。
こんな生々しくて野生的なロストバージンもなんだかかっこいいと思ってしまった。

Mamiko Kikuchi

愛人 ラマン

公開年:1992年
製作国:フランス/イギリス
ジャン=ジャック・アノー監督

奇これはまだ人の愛し方も知らない少女が退屈な毎日と貧しさへの慰めをキッカケに快楽に溺れる耽美的な愛の物語。
茹だるような湿気のこもるサイゴンの一角で、無心でセックスをするシーンよりも、少女の足の間から溢れる赤い血液とそれを無言で拭き取る青年の姿のほうがとてもエロティックに映った。
これを観るまで愛は、2人が出会い、見つめあってからようやく生まれていくとのだと思っていたのに、からだとからだが合わさって、それから心がずっとあとから追いついてくる事もあるのだと知った。
未来がなくてもこびりついて離れない愛もあることも知った。

 

Mamiko Kikuchi

ジョゼと虎と魚たち

公開年:2003年
製作国:日本
犬童一心監督

愛を望むのは呼吸をするのと同じくらい当たり前なことなのに、そんなことを願いもせず強固な壁の中に隠れ、淡々と生きていたこの物語のヒロイン ジョゼ。
自分の作ったごはんをおいしそうに食べる彼。自分のために涙を流してくれる彼。
誰かに愛されることなんか考えもしなかった女の子が心も体も捧げて愛されたいと思った一生に一度の恋。
この映画で初脱ぎした池脇千鶴さんの姿を相手役の妻夫木さんは本当に愛おしそうに抱きしめたシーンが切なくて優しい。
そしてロストバージンがこんなに大切なものなのだと改めて知って胸がギュッとなる。

Mamiko Kikuchi

プリティベビー

公開年:1978年
製作国:アメリカ
ルイ マルァ監督

 

女の子はいつだって何者かになるのが好きだ。ドレスを着てお姫様になったり、エプロンをつけてお母さんになったり・・
この物語の主人公バイオレットもまだ12歳なのに娼婦の母親に追いつこうと処女を売り、恋の真似事もする。
でも男に抱かれたからといって大人の女性になれるわけではないし結婚したからといって貞淑な妻になれるわけでもない。
母の胸に抱かれればまだ娘に戻ってしまう幼さの残るバイオレットが、大人の男を妖艶に誘惑するそのアンバランスさがなんとも魅力的で、タブーだらけのこの物語に思わず納得してしまいそうになるからあぶない。あぶない。

Mamiko Kikuchi

この国の空

公開年:2015年
製作国:日本
荒井晴彦監督

明日突然死ぬかもとか、明日好きな人がいなくなるかもしれないなんてことは考えたこともなかった。
一番きれいな年ごろに、周りの男たち兵役にとられて、周りに若い男はだれもいなくなった。そんな時、大人の男性に見つめられて生まれて初めて「きれい」と突然抱きしめられたら自分の中の女が目覚めてしまうのは必然。
たとえ不謹慎だとしても、矢のように鋭利な欲望はカラカラに乾いていたから今すぐにでも抱いて欲しくて真夜中にもぎたてのトマトをあの人に渡しに行くだなんて、、
そんな艶めかしい処女の捧げ方もあるのだと知って、そんなことができる主人公に少しだけ嫉妬してしまった。