Mamiko Kikuchi

美女たちが奏でるサスペンス映画たち


サスペンスとエロスは基本とても相性が良い。
それは人が急遽の行動に突き動かされる時、そこに愛欲が絡んでいることがものすごく多いからだ。
少々趣味の悪い話をすると、私は古今東西、時代問わず愛欲に絡んだ実際の事件について検索するのが好き。
その犯人たちの感情がどう生まれて何故その結末に向かうことになったのか気になってしまう。
それなのに読み進めらうちに今度は少しずつ嫌な気持ちになって落ち込んでいく私。あー厄介。

 

そういう意味では映画のクリエイターたちはそんな事件たちをほどよく調理してくれて、あっとした仕掛けで満足させてくれる。
どうにかして感情を終焉に向かわせてくれるから後味も悪くない。
今回ここで紹介するのはどれも物語の中に美女が深く関わり、そのことでより作品が艶かしくなっていく。
ここにエロスが絡むとそれはより一層深まるわけで・・・
普通のラブストーリーなんてつまんないたまには刺激的なやつ欲しい!
そんな人には是非観て欲しい5作品です。

殺しのドレス

公開年:1980年
製作国:アメリカ
監督:ブライアン・デ・パルマ

夫とではもう濡れないとウンセラーに打ち明けた人妻が、その後美術館で出会った何者かに殺される。
まるでヒッチコックの『サイコ』のような始まりは、監督がオマージュしたものらしい。しかしそんなスプラッターシーンでさえもエロティックでスタイリッシュなのがデ・パルマのセンスの成せる技。
こちらの作品の見どころはプロットではなくデ・パルマの秀逸なカメラワーク。
そして本題から外しても無理矢理挿入してくる監督の嗜好の数々。
エロティックサスペンスだと、どうしても要らぬヌードが多い時もあるけれど、そのヌードを無駄なくテクニカル見せてきて、飛び散る血飛沫までもアートのようなそんな作品でした。

キリングミーソフトリー

公開年:2002年
製作国:アメリカ
監督:チェン・カイコー

いつもと変わらない日常。
でも、誰かが私を待っている。
そうやって何かを探していた私にとってあの時見つけた彼の瞳は、足を踏み外すのに十分だった。
首に結ばれたサテンの紐は信頼の証。
彼の意思一つで息の根も止められてしまう。
それは、世にも妖しい愛欲の世界。


中国の巨匠チェン・カイコーが大胆なエロス表現を盛り込んで放ったサスペンス。
私には運命の恋とは何なのかなんててんで分からないけれど、自分を大きく変える存在とは、長く人生を共にするべきではないのかもしれない。
ミステリアスな魅力たっぷりのジョセフ・ファインズのあのエキゾチックな瞳のせいで、私もヒロインのアリスと一緒ににこのアダムの作り出す独特な世界に巻き込まれていきそうになりました。

二重螺旋の恋人

公開年:2017年
製作国:フランス
監督:フランソワ・オゾン

分裂していく 私の中の何かが・・・


向かい合わせの精神科の部屋で、挑発的に話し続けるクロエと黙って聴き続ける寡黙なポールとの診療はまるで高尚なセックスのようだと思った。
精神的なセックスと心理的なセックス
二つの欲望に上手く折り合いがつかないままずるずると双子のポールとルイとの関係に思い悩むクロエはいつしかルイの幻影にさえも追い込まれる。


鏡のシーンを多用した印象的なシーンをサブリミナルに挿入させて、フランソワ・オゾンらしいヨーロピアンで洗練された映像が魅力。
前半はミステリー、そして後半はホラー(少々グロ)となってまったく異なる印象となる心理的ミステリー。
全ての謎が解ける衝撃のラストより、どちらかというと、独特な色気を漂わせるマリーヌ・ヴァクトの美しさを愛でる作品という感覚で観る事をお勧めします。

クロエ

公開年:2009年
製作国:アメリカ
監督:アトム・エゴヤン

旦那の浮気を疑い、妻は美しく若い娼婦を雇いトラップを掛ける。
毒の混ざるその美しい唇に触れてもなお、探し求める真実の愛は見つけられず。
虚しさと安堵が同時に押し寄せる。


元となったのはフランス映画の『恍惚』。
魔性の女をアマンダ・セイフライドが演じているこちらはハリウッド版です。
ねっとりとしたサスペンスと思いきや、心理戦のような風合いも見せてくれるテンポの良いエロティックサスペンスとなっている。
ジュリアン・ムーア演じる妻と、アマンダ・セイフライド演じる雇われた娼婦クロエ、互いの想いが制御不可能になり、妖しく美しく深みにはまっていくのがこの作品の見どころの一つ。
娼婦クロエが時に少女のような無邪気な表情と、妖艶な悪女の2つの顔を見せ、圧倒的な存在感で引き込んでいく作品でした。

薄氷の殺人

公開年:2014年
製作国:中国
監督:ディアオ・イーナン

耽美的な世界観の中で描かれるのは残酷すぎる愛の形。
憂鬱でフイルムノワールを意識したような演出のこの作品はじめじめとした雨の日に観るのにはぴったりかもしれない。
血なまぐさいグロテスクさと、洗練された映像美の両方が味わえる独特な作品でもある。


迷宮入りのバラバラ殺人事件
儚げな美しさの被害者の妻と、彼女に魅了される元刑事。
鬱屈とした内容とはちぐはぐな電飾鮮やかな遊園地の観覧車の映像が田舎町に漂う不条理さを表しているよう。


一筋縄では男女の情念がサスペンスとしての輪郭を曇らせる。だからサいっそのことメロドラマとして観るくらいの方が見応えがあるかもしれない。まるで爆竹のように、虚しく弾けるラストシーンが不器用にしか生きれなかった男女のやるせなさを物語っていた。