同性愛を描いた作品は数あれど、わたしにはいくつか好きなパターンがあってそれはゲイの男性と女性との、性を超えた友情だ。
女の子になんでも相談に乗ってくれる親友がいるように、気持ちが女の子に近いゲイの男性にだって女の子の友達必要なはず。
繊細に生きる、彼らの心の傷を時に恋人のように、そして時には母親の如く癒してくれるそんな存在が何よりありがたかったりする。
そんな女性たちの姿もまた美しくて、こんな女性たちにいつも憧れてしまうのだ。
今回はそんな女性たちの姿が光る作品たち。
どれも大好きで仕方ない私の宝物
わたしはロランス
公開年:2013年
製作国:カナダ/フランス
監督:グザヴィエ・ドラン
世界の全てが彼らのもののようにパステルカラーに輝いている2人の恋物語は突然のロランスのカミングアウトによって終わりを告げる。
男とセックスしたいのと、女になりたいのとはイコールでは無い。
女になりたかった男の運命の人が女性であることだってある。
初めて会った時、凄いことが起こると思ってた。
ずっと一緒にいたいと思った。
互いを尊敬してかけがえのない唯一無二の愛の形。
自分が壊れても相手を尊重するなんてとんでもない深さの愛を見た。
愛する人を愛し続けたら精神が崩壊するのに、愛する人に会えないとそれはそれで崩壊する。
簡単な方程式では解き明かせない愛の物語をドランの見せたい世界観が素晴らしすぎて
168分の長編映画だけど、苦しいけど、ラストに行くにつれてまだ終わりたくないと本気で思った。
ずっとフレッドとロランスの紡ぐ物語を見ていたいと思ってた。
そんな作品。
シングルマン
公開年:2009年
製作国:アメリカ
監督:トム・フォード
ファッション界の第一線で活躍し続けているトムの初監督作品。
隙のない美学を持ったクリエイターだからこそ生み出せる美しい映像とシチュエーションにこだわった作品。
激しさや泥くさい人間模様の見せ方は皆無なので、ダークサイドを描いているのに見心地が良い。
描かれるのは恋人を失った哀しみから解放される為に死を決めた大学教授の長い一日。
死を意識した時から人は日常の何気ない光景や関わった人々の心が美しく感じてしまうこともある。
喪失感と罪悪感、そして人生への未練。
そこに際立ってくるのがジュリアン ムーア演じる女友達チャーリーの包容力のある存在感がこの物語唯一の温もりだった。
傷ついて、後戻りが出来なくなっているジョージを自分の存在では癒すことができない・・・
そんなもどかしさがチャーリーの表情から見て取れるから無性に切なくなってしまう。
きっと、チャーリーはまだ彼を愛しているのかもしれない。
渚のシンドバッド
公開年:1995年
製作国:日本
監督:橋口亮輔
愛した彼は自分の事を友達だとしか思っていなくて、彼の見つめる先は自分と全く違うあの娘。
一緒にいてとても楽しくて、幸せだからこのままでも良い気がする。
でも、彼の「好き」の視線が僕を通過して、彼の心は別の誰かに釘付けになる。
そわそわして、嫌われたくないから友達のふりをして。
思春期のゲイの少年が抱えた苦しみがたくさん詰まった閉塞感。
もう苦しくて想いを全部伝えなくちゃ壊れてしまいそうになった時、助けてくれたのは彼が愛するあの娘だった。
到底敵わない恋のライバルだと思っていたのに、自分のことを1番理解してくれた少女。
夕暮れの海辺で少女に借りた真っ白なドレスを着た少年の姿はまるでウェディングの花嫁さんのようでそれだけで報われた気持ちになる。
プルートで朝食を
公開年:2005年
製作国:アイルランド/イギリス
監督:ニール・ジョーダン
悲劇の連続なはずなのに、最高にハッピーマインドで愛おしい主人公が幸せな気持ちにさせてくれる作品。
トランスセクシャルな問題に排他的なアイルランドの田舎に住む孤児のパトリック(パティ)が描きなが母を訪ねて三千里@ロンドン。
途中、愛した男は幾人かいたけれど、その思いはいつだって満たされることはなくて、
幸せなんて手を伸ばしてもいつだってスルリと抜けて掴むことはできないけど、振り返れば追いかけてくる月みたいに、パティを諦めさせることはないその力強さに心が動かされてしまう。
パティの頼もしい程のポジティブなパワーは親友であるチャーリーを包み込こんで、2人の奇妙な家族関係がスタートする。
チャーリーが少女の頃描いたひそかな恋心はいつしか深い友情と形を変えて、「もう何も怖くない。」
と言わんばかりに、波乱万丈なんのこれしき、楽しそうにお尻を振って歩くパティの姿に私はもう女としても完敗。
彼の見つめる先に
公開年:2014年
製作国:ブラジル
監督:ダニエル・ヒベイロ
匂いとか、手触りとか、声とか、感覚で感じ取れるものは、目で見て色々考える手間が省けるだけ実はもっと正確なものなのかもしれない。
深い絆で結ばれた男女の幼なじみのジョバンナとレオ。
恋愛関係になるには、2人はあまりに近過ぎて、一心同体のようになってたから離れ離れになることは考えてもなかった。
そう、あの日までは・・・
まだ成熟していない少年少女の「嫉妬」はとっても複雑。
恋心なのか、それとも友人としてのものなのか分かんないままに、2人の間に割って登場した魅力的すぎる転校生ガブリエルの存在がジョバンナとレオの関係を揺るがしてしまう。
いつか誰かと優しいキスをしたい。
恋の苦さも一人前に味わいたい。
そんな思春期の少年少女が抱く想いを丁寧に見せながら、失ってはいけない大事な物を気付かせてくれるビターな三角関係の物語でした。